大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)3414号 判決

一 当裁判所も控訴人の本件仮処分の申請は被保全権利について疎明がなく、保証を立てさせて疎明に代えることも相当でないから、これを失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり訂正、附加するほかは原判決の理由欄一ないし四と同じであるから、これを引用する。

1 原判決(以下同じ)一八枚目表一一行目「本件考案の」から一九枚目表六行目「見い出せない。」までを次のとおりに訂正する。

「成立に争いのない疏甲第一九号証によれば、「盲板」という用語は、昭和三八年にその八版が発行された社団法人日本機械学会刊行の「学術用語集機械工学編」(著作権所有文部省)に独立の技術用語として採択集録されている用語であることが認められ、原審における証人渡辺三義の証言によれば、盲板は液体や気体を対象とする機器の分野では一般に隙間や穴があいていない板という意味で技術者に慣用されている用語であることが認められる。また、労働安全衛生規則(昭和四七年労働省令第三二号)第二七五条、特定化学物質等障害予防規則(同年同第三九号)第二二条、酸素欠乏症等防止規則(同年同第四二号)第二二条に「盲板」という用語がそれぞれ「危険物等が漏えいし、又は高温の水蒸気等が逸出しないよう」、「作業箇所に特定化学物質等が流入しないよう」あるいは不活性気体の漏出を防止する各目的のために用いる「隙間あるいは穴のあいていない板」との意味を示す普通名詞として特段の定義付けがされることなく使用されており、これらの事実からすると、「盲板」という用語は、一般的に「隙間あるいは穴のあいていない板」という意味を持つ用語として技術者の間で慣用されていることが認められ、これに反する証拠はない。

一方、成立に争いのない疏甲第二号証によれば、本件明細書には、「盲板」という用語か、その実用新案登録請求の範囲、考案の詳細な説明及び図面の簡単な説明のいずれの箇所においても、それが具体的にどのような構造を有する板であるかについての特段の定義、説明がないまま用いられていることが認められる。そして、実用新案登録出願の願書に添附すべき明細書の用語は、「特定の意味で使用しようとする場合において、その意味を定義して使用するとき」を除き、「用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書全体を通じて統一して使用する。」ものとされている(実用新案法施行規則二条、様式第三、備考8)のであるから、本件明細書において、特段の定義付けなく用いられている「盲板」は、その有する普通の意味、すなわち前示の「隙間あるいは穴のあいていない板」の意味で使用されていると見なければならない。

前掲疏甲第二号証により、本件明細書及び図面の記載を精査しても、本件考案の「盲板」という用語が、右の普通の意味と異なり、控訴人の主張するような人体が通過できない程度の大きさの隙間や穴があつてもよい板を含む意味に用いられていると解することができる根拠は見いだせない。かえつて、本件明細書の考案の詳細な説明中の本件考案の実施例を説明する部分の「ケース部は、直方体のケースフレーム9の両側方および背面に格子状若しくは網状面を形成させると共に、前面に開閉自在なパンタグラフ式の通湯ドア10が必要に応じ付設され、上面および底面には断熱用の盲板11、12が取付けられ」(疏甲第二号証第2欄第三二ないし第三六行)との記載によれば、ケースフレーム9の両側方及び背面は格子状もしくは網状面に形成されること、すなわち隙間あるいは穴のあいている面として形成されるのに対し、上面及び底面には断熱用の盲板11、12が取り付けられるとして、「盲板」という用語を格子状もしくは網状面すなわち隙間あるいは穴のあいている面を形成する格子状板や穴抜き板(パンチングボード)など本件考案の出願前から慣用されている材料と区別して用いていることが認められるのである。」

2 二〇枚目表八行目及び同枚目裏四行目の各「の考案」をそれぞれ「に添付された各明細書の考案」と訂正する。

3 二一枚目裏九行目の「考えると、」の次に「前示当事者間に争いのない本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載されている」を加え、同裏一一行目「と解するのが相当であり、」から二二枚目表三行目「得ない。」までを「と客観的、一義的に解されるのであり、これを控訴人主張のように隙間あるいは穴のあいている板を含むものと拡張して解釈することのできる根拠は、本件明細書の記載からも、また右2に認定した出願人(控訴人)の認識に照らしても見いだすことができない。控訴人は、本件考案の「盲板」を「隙間あるいは穴のあいていない板」と解することをもつて、本来「盲板」の用語が有する意味を限定縮少して解釈するかのように主張するか、この主張を含め控訴人の主張1、2がいずれも理由のないことは、以上に述べたところから明らかである。」と訂正する。

4 二二枚目表六行目「本件考案」から同八行目「検討しておく。」までを「控訴人の主張3(本件考案の技術的範囲についての予備的主張)について検討する。」と訂正する。

5 二四枚目表九、一〇行目の「(公告同年四月二六日・昭五八―二〇一八一)記載の公案を出願し、」を「(公告昭和六〇年八月五日・昭六〇―二五九四九)記載の考案について実用新案登録出願し、」と訂正する。

6 二四枚目裏二行目の「本件煮沸装置は、」から同四行目の「できない。」までを「本件考案の上下の盲板と本件煮沸装置の天板及び底板とはその有する作用効果を異にし、技術手段として直ちに置換することが可能かつ容易であると認めるに足りる程度に等しいものということができないから、仮に控訴人の主張するように、実用新案登録請求の範囲に記載された当該考案の必須の構成を備えないものであつても、この必須の構成と置換可能性及び置換容易性がある構成を備えるものは均等として当該考案の技術的範囲に属するとしても、本件煮沸装置が本件考案と均等の装置であるということはできない。」と訂正する。

二 よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。

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